銅ヶ丸は自由な自然観察のフィールド
(邑智郡美郷町銅ヶ丸鉱山)

関連記事「野外で実験! 銅ヶ丸鉱山へ行こう」 「みんな銅ヶ丸鉱山へ行こう」


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(現在のスライド数11枚)
 
鉱口付近を飛びまわるコウモリ
 一般に鉱山というところは大変露頭状況が良いので、広い範囲にわたって岩相の変化を追跡していくことができて自然史関係の観察活動や採集などには絶好のフィールドだと言えます。
 銅ヶ丸鉱山も採鉱跡地はもちろんのこと周辺の谷川流域も下流から上流へかけて大変露頭状況が良いところなので、ハンマーを持って自由に採鉱跡地や谷川流域を歩き、心ゆくまでじっくりと観察や採集ができるフィールドです。。
 しかし、近隣の著名な鉱山とは対象的に立地条件が悪く、鉱山関係や自然史関係に関心のない一般の人達も気軽に出かけていけるようなところではありません。 だから、○○遺産とか○○指定文化財、○○天然記念物といった、いわゆる「お上のお墨付き」というものにはほとんど縁がない、といった感じのところです。
 「お上のお墨付き」というのは、観光による経済の活性化や文化・自然の保護保全、後世への継承、といったことには大変効果のあるものですが、当館のやっている野外発見学習にとっては、お墨付きのついているフィールドはあまり都合がよくないです。
 当館の活動の軸である「野外発見学習」というのは、わからなければわかるまで何度でもフィールドへ足を運び、自分の納得のいくまで露頭をハンマーで叩きまくって歩く、というもので、野外発見学習が目指すものは、「代償を当てにしない探求意欲」と決して挫けない「しぶとい探究心」です。
 銅ヶ丸鉱山は、ほとんど全く「お上のお墨付き」には縁がないですが、代わりに「野外発見学習」には絶好のフィールドだと思います。 

 地球の自然環境というものは、人類を含むすべての生き物に共通の財産であり、どんな自然も区別なく未来へ引き継がれていかなければならないものであるはずです。 基本的にも根本的にも、自然というものは、お墨付きの有る無しに関係なく大事にしなければいけない、ということで、このことを世間の人達はもっと強く自覚すべきだなんだろうと思います。 人間の経済活動に利益になる自然は大事にして、逆に経済活動の妨げになる自然は大事にしない、といったのが現実という感じです。

銅ヶ丸は自由なフィールド、銅ヶ丸自然史観察会に参加しよう!
●銅ヶ丸のフィールドで鉱床のでき方を探求してみたいという方達だけでなく、鉱物採集やハイキング、鉱山史関係などが目的の方達も当館の観察会にどしどし参加していただきたいです。
●定例の観察会は、毎年4〜5月のGW期間中に行っていますが、これ以外の期間(ただし、秋は松茸の季節のため入山の許可をしてもらえないのでダメです)でも当館へ希望日をご連絡してもらえば、山林所有者から入山許可をもらって観察会をします。
 ただし、参加人数は3名まで(銅ヶ丸鉱山周辺は全く整備されてないので、団体の参加は少々無理)です。
●なお、当館では義理人情にもとづく参加はご遠慮してもらってます。 また、個人や団体へ参加を催促するようなことも一切しません。(ありがた迷惑に思われてはいけないため) 純粋に当館の観察会に興味のある方々だけに参加していただくようお願いします。
 当館への連絡は電話でお願いします。 TEL 0855-93-0795 080-1645-0475  



鉱口付近に発生した霧・・・風穴霧

(令和3年7月18日午後5時半ごろ撮影)
 写真中央付近の谷間になっているところに小規模な霧がうっすらと映っています。 写真には写っていませんが、谷間の右横に鉱口が開いていて、ここから吹き出してきた冷たい空気によって鉱口付近の暖湿な空気が冷やされて、その中に含まれていた水蒸気が凝結して霧になったものです。 この日も大気が不安定で午後から急に雨が降り出した後、再び日差しが戻って一気に湿度が上昇して空気が暖湿になっていたときでした。
 鉱山斜面に吹き付けた南風が鉱口から内部に入り込み、内部で冷却されて重くなった空気が標高の低い鉱口から吹き出しているもので、鉱山の鉱口が風穴になっています。



                  貫入関係か、それとも漸移関係か  境界はあるのか、ないのか...     

 ← 鉱山跡地の風景
 今年(令和4年)も春から夏にかけて銅ヶ丸鉱山周辺で観察活動をした。 今年は春からものすごく暑く、大量の汗をかいてすぐに疲れて昼寝がしたくなってしようがなかった。 しかし、銅ヶ丸は「お上のお墨付き」などない自由なフィールドなので、夕方遅くまで露頭をハンマーで叩きまくって歩くことができた。 しかし、相変わらず頭をかしげるような岩相が多く、問題を抱え込むばっかりだった。

 銅ヶ丸へ行き出してもう二十年以上経つけれど、いまだに確からしいことがほとんどわからない。 以前から銅ヶ丸一帯の地質体をなす各種の岩相の層序的な関係を明らかにするために、異なる岩相同士の地層境界を探して露頭をハンマーで叩きまくって歩いている。 しかし、鉱山やその周辺の岩相は、どれも再結晶や珪化・鉱化といった変質作用が進んでいて初生的なものがほとんどないので境界を探し出すのが大変難しい。

 左の写真は鉱山跡地のものですが、この一帯の地質体は無数の石英脈が貫入している斑状顕著な岩相で、初生の岩相が斑岩なのか結晶質凝灰岩なのか、いまだにはっきりわかりません。(この岩石を当館は「銅ヶ丸岩」とかってに命名している)
鉱山跡地の珪化・鉱化を受けた岩相 → 
 右の写真は、鉱山跡地の斑状顕著な岩相中へ石英脈(白い帯状のところ)が貫入していて、周辺は珪化と鉱化が進んで微細な石英と黄銅鉱が濃集しているものです。

 この鉱山跡地の岩相が初生的に斑岩だったものか、あるいは結晶質凝灰岩だったものかを明らかにするためには周辺にある花崗岩や結晶質凝灰岩との接触関係(貫入関係か漸移関係か)がわかればいいのですが、実際に異なる岩相同士が隣り合わせている付近を探し出すのは肉体的に大変な作業で、実際に接触付近を探し出せても石英脈の貫入の影響でわかりにくい岩相になっていて観察をするのに大変苦労しました。
 このたびの観察活動も採集したサンプルから作製した岩石薄片の検鏡をやりながら進めていったけれど、結局よくわからずじまいだった。

 ← 滝壺付近の花崗岩に貫入している安山岩の岩脈
 左の写真は鉱山の麓を流れている谷川にある高さが4m位の滝の頂上付近で撮ったもので、滝壺付近で花崗岩に安山岩の岩脈が貫入しています。 これくらい接触境界がはっきりしていれば、野外で簡単に見つけることができ、貫入関係で接していることが一目瞭然です。

谷川でみつけたシカの角→ 
 銅ヶ丸の麓を流れる谷川やその支流の谷川を歩くとシカの角が落ちているのを見かけることがけっこう多い。 また、谷川の砂地にシカのものと思われる蹄(ひずめ)の跡がついているのもよく見かける。 水を飲みに山から降りてくるのであろうか。 いつか、この銅ヶ丸のシカを間近に見てみたいものです。

 ← 煙突状の鉱口
 鉱山跡地には、たくさんの鉱口がありますが、真上に向いて開いている鉱口もあって大変ユニークです。 排気口みたいな役割をしていたのかもしれませんが、もしかして当時、鉱山内部で焼き肉やバーベキューをしていたのかもしれない。 肉はもちろんイノシシやシカの肉だったにちがいない。
 まさにジビエである。
緑の水藻 → 
 銅ヶ丸流域には、「緑の滝」という銅を含む変質鉱物が滝斜面に泥状に付着したところがありますが、夏場に銅ヶ丸流域の谷川の川床に見られる緑の付着物は決して銅を含んだ変質鉱物などではなく、緑色をした水藻です。 太陽の光が当たっているところでは、光合成によってさかんに気泡を出しています。 魚はいませんが、アメンボやカエルは多いです。
(画像をクリックすると拡大画像にリンクします →)

 ← ゴミを捨てるな!
 8月下旬ごろに銅ヶ丸へ踏査に行ったおり、いつも車を駐車している付近の谷川にゴミが散乱していた。 弁当ケースやジュースの空箱、バナナの皮など3人分のものがあった。 弁当の表示を見ると美郷町粕淵の「Aコープ」と書いてあった。 この弁当はもしかしてマグロの刺し身が載った寿司弁当ではなかったろうか。 まったく贅沢なことである。
 以前、鉱物マニアによる産地荒らしが全国的に問題になったことがあるが、もしかして、こういう関係の連中かもしれない。
 こういった連中には来てほしくないものである。 

鉱物の科学展(平成19年7〜8月 桜江町坂本の博物館施設にて)
  
 上の三枚の写真は、平成19年の夏に同町坂本にある水をテーマにした博物館施設で「鉱物の科学展」という展示をしたときの模様です。 当館が持っている鉱物や鉱石を使って、鉱物の物理的・化学的な性質をテーマにして展示し、ここでも銅ヶ丸鉱山産の主要な鉱物や鉱石を展示しました。
 当時、石見銀山が世界遺産に登録が決まり、県内では大田市を中心に大騒ぎしていたころでした。 この「鉱物の科学展」など知る人ぞ知る、知らない人は全く知らない、といった感じのものでしたが、石見銀山へ行った帰りという人達がこの展示を見られ、「石見銀山よりもえ〜」などと言われたことがあったそうです。 やはり、ほとんど冗談のつもりだったのだろうか。

 自分としては、いつか銅ヶ丸鉱山の自然史をテーマにした展示をしたいと思っていますが、銅ヶ丸へ行き出してから二十年以上も経つというのに、いまだ銅ヶ丸一帯の地質体の層序的な区分について発見的に理解できておらず、また銅ヶ丸の特徴的な鉱物種の詳細に関してはほとんどやっていないという状況です。 特に鉱物種に関しては機器分析が必要になるので、当館のように安物の透過偏光顕微鏡で岩石の組織を見るのがせいぜい、といったところでは大変ハードルが高いです。 まあ、あせらずにコツコツやっていこうと思います。 



 銅ヶ丸鉱山へ行き始めてからもう二十年以上が経つけれど、鉱脈鉱床を含んでいる母岩の正体を自分はずっと解明できずにいた。 鉱山跡地に広くみられるこの岩石を自分は「銅ヶ丸岩」とかってに命名して長く探求していた。 ところがこの春(令和5年春)、鉱山跡地近くの山斜面や鉱山周辺の谷川沿いで花崗岩が銅ヶ丸岩へ貫入して接している境界を発見することができ、銅ヶ丸岩は鉱山跡地よりも南東側一帯に広くみられる火山砕屑岩(主に結晶質凝灰岩)がホルンフェルス化や珪化、鉱化を強く受けてできた複次的な岩石だという確信をようやく持てるに至った。
 熱水鉱脈鉱床だけに限ってみても、鉱床のでき方などは鉱物・鉱床・岩石関係の専門書や大学の研究者の方達が出されている論文を見れば一目瞭然なのだろうけれど、短絡的に完成された科学的知識のコピーや受け売りで済ませてしまうのではなく、ちゃんとフィールドを自分の足で歩き、自分の目でしっかり観察し、そして自分の頭で考え抜く、こうやって自然を発見的に探求的に学んでいきたいものです。 露頭状況抜群の銅ヶ丸は、野外発見学習の絶好のフィールドだと思います。


花崗岩が銅ヶ丸岩(結晶質凝灰岩が初生の岩石)へ貫入して接している境界 「その1」
(産地:美郷町銅ヶ丸鉱山)
(サンプルの表面を研磨している/右端はサンプルから製作した薄片/左端は大きさ比較のために置いた10円玉)


銅ヶ丸岩
拡大画像へリンク


結晶質凝灰岩
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 銅ヶ丸鉱山跡地の鉱脈鉱床を含んでいる母岩を当館は以前から「銅ヶ丸岩」とかってに命名していますが、上の写真に示しているa-b境界よりも上側が銅ヶ丸岩で、下側が花崗岩です。 境界は矢印aの先から矢印bの先にかけてゆるくカーブして続いています。
 銅ヶ丸岩は斑状的で、薄片を顕微鏡で観察すると斑晶状の石英の輪郭はギザギザに細かく入り組んだようにな ており、斑晶状の長石は残斑晶になって輪郭が不鮮明になっています。 また、マトリックスに相当する組織は初生の岩石である結晶質凝灰岩の陰微晶質のマトリックスに再結晶が進んでかなり粗く微晶質化しています。 一見して銅ヶ丸岩は斑岩に似ていて、以前までは花崗岩の等粒状から斑状に漸移変化しているものかと思っていました。
 サンプルの右側に置いている薄片は境界を含んだ部分を切り出して制作したもので、薄片を顕微鏡で観察すると境界直近の花崗岩の側は細粒化していて石英や長石などの無色鉱物に富んでいます。 境界は不鮮明で、銅ヶ丸岩の構成鉱物と花崗岩の構成鉱物とが互いにモザイク状に噛み合ったようにして接しているのがみられます。


 ← 花崗岩が銅ヶ丸岩へ貫入して接している境界がみられる露頭

 左の写真の露頭は、数年前(令和3年7月)に発生した集中豪雨の際に山斜面を覆っていた表土が剥がれて現れたものです。 写真左端の少し斜めの立木あたりから右下に置いているリュック付近にかけて境界が通っています。

銅ヶ丸岩を貫く花崗岩の貫入脈(白い帯状の部分)↓
 境界付近の銅ヶ丸岩には、花崗岩の側から局所的に入り込んでいる同質の貫入脈がみられます。 右の写真の脈の幅は1.5〜2cm位ですが、近くの別の露頭にはもっと細い脈もみられます。 銅ヶ丸岩のマトリックスは再結晶が進んで粗く微晶質化し、さらに珪化も進んで白雲母も多量に含んでいます。
 銅ヶ丸岩の構成鉱物と貫入脈の構成鉱物とがモザイク状に噛み合ったように接しているため、脈と銅ヶ丸岩との境界が不鮮明で、あまりはっきりした脈状を呈していません。



花崗岩が銅ヶ丸岩(結晶質凝灰岩が初生の岩石)へ貫入して接している境界 「その2」
(産地:美郷町銅ヶ丸鉱山)

↑ 花崗岩が銅ヶ丸岩へ貫入して接している境界がみられる露頭
 銅ヶ丸鉱山の鉱山跡地から離れるほど銅ヶ丸岩(結晶質凝灰岩が初生の岩石)に珪化や鉱化が及ばなくなっていくので、このようなところにある花崗岩と銅ヶ丸岩との境界はかなり鮮明になっています。
 上の写真の滝(高さ約4m)は鉱山の麓を流れる谷川(今津川)の支流の小さな谷川にあって、鉱山跡地中心付近から直線距離で約350mたらずの位置にあります。 滝直下から下流側はずっと銅ヶ丸岩が続き、滝斜面から上流側はずっと花崗岩が続いてみられます。 つまり、滝直下付近をほぼ横断して花崗岩と銅ヶ丸岩との境界が通っています。
 この付近には石英脈はほとんどみられず、目立った珪化や鉱化もみられません。 花崗岩からの再結晶作用だけが主で珪化も鉱化もほとんど受けなかったので、境界が比較的明瞭に残ったのだろうと思います。


花崗岩が銅ヶ丸岩へ貫入して接している境界付近から叩き出したサンプル
 上の写真の手に持っているサンプルで、下側の白っぽいのが花崗岩で、上側の青黒っぽいのが銅ヶ丸岩です。
 花崗岩の方は中粒等粒状的で、理想的な花崗岩よりもさらに白っぽく、有色鉱物や不透明鉱物はわずかしか含まれていません。
 銅ヶ丸岩の方は写真では青黒っぽい色や茶褐色を呈していますが、これは表面付近の風化が強く進んでいる部分で、比較的新鮮な部分はもっと白っぽくて青灰色〜白灰色を呈しています。 銅ヶ丸岩は斑状的で、薄片を顕微鏡で観察すると斑晶状の石英の輪郭はギザギザに細かく入り組んだようになっており、斑晶状の長石は残斑晶になって輪郭が不鮮明になっています。 また、マトリックスに相当する組織は初生の岩石である結晶質凝灰岩の陰微晶質のマトリックスに再結晶が進んで微晶質化しています。
 上の写真の手に持っているサンプルで、一番下側の青黒っぽい色や褐色のところが銅ヶ丸岩で、その上の白っぽいのが花崗岩です。 そして、さらにその上にある青っぽい部分や茶褐色の部分は銅ヶ丸岩の砕屑物(砂粒や小礫)が花崗岩に含みこまれていると思われるものですが、不明瞭で、もしかして花崗岩が銅ヶ丸岩の中へ脈状に貫入しているサンプルかもしれません。 実際に境界付近の銅ヶ丸岩の側には花崗岩の側から派生して貫入している花崗岩質の細脈がいくつもみられます。
 左のサンプルと同様に銅ヶ丸岩は青黒っぽい色や茶褐〜褐色になっていますが、これも風化のためで、新鮮なものほど青灰色〜白灰色です。
 花崗岩と銅ヶ丸岩の特徴は、左のサンプルのものと同じです。



花崗岩が銅ヶ丸岩(結晶質凝灰岩が初生の岩石)へ貫入して接している境界!?
(産地:美郷町銅ヶ丸鉱山)

↑ 花崗岩が銅ヶ丸岩へ貫入して接している可能性のある露頭
 以前から「銅ヶ丸は自由な自然観察のフィールド」のページに長く掲載していた露頭写真で、黄色の色鉛筆の先付近を横方向に岩相の境界が通っています。 下側のザラザラした岩相は細粒等粒状的な花崗岩質岩石で、理想的な花崗岩よりも有色鉱物や不透明鉱物が少ないです。 上側のツルツルした岩相は珪長岩に似て全体に緻密ですが、斑晶状の石英が点在して含まれています。
 今までは、この岩相境界は花崗岩質マグマの結晶分化によって上下に異なる相が分離してできたものと考えていました。 つまり、この境界は岩相の急激な漸移変化によってできたものと考えていました。 しかし、最近になって鉱山跡地周辺で花崗岩が銅ヶ丸岩へ貫入して接している貫入境界に間違いない露頭を各所で発見してからは、もしかしてこの境界も同様な貫入境界の可能性があるのではないかと考えるようになりました。 つまり、今まではマグマの「上澄み液」が固まってできた岩石と考えていたものは、実は鉱山跡地にある銅ヶ丸岩と同じように結晶質凝灰岩が再結晶や珪化などの強い変質作用を受けてできたものではないか、と考えるようになりました。


 ← 露頭全景(黄色の色鉛筆の先付近を横方向に境界が通っている)

↓ 境界付近のサンプル(表面を研磨している)
  
(下の十円玉は大きさ比較のために置いたもの)
 右側の写真のサンプルは境界付近を大ハンマーで叩き出したもので、矢印aの先から矢印bの先にかけて右斜め下に境界が通っています。 境界よりも下側の白っぽいのが細粒等粒状的な花崗岩質岩石です。 境界よりも上側のちょっと青っぽいのが斑晶状の石英が点在する全体に緻密な岩石で、細粒の黄鉄鉱も点在して含まれています。
 サンプルの右側に置いている薄片は境界よりも上側の岩石から製作したもので、薄片を顕微鏡で観察すると、含まれている斑晶状の石英の輪郭はギザギザに細かく入り組んだようになっており、マトリックスに相当する部分は微晶質的で、花崗岩近くの銅ヶ丸岩のマトリックスのようにかなり粗いです。 斑晶状の長石はみられませんが、マトリックスには含まれています。 無色鉱物が大部分を占めており、有色鉱物には変質してできたと思われる緑れん石、不透明鉱物には黄鉄鉱とこれが変質してできた褐鉄鉱が含まれています。
 サンプルの左側に置いている薄片は、境界を含んだ部分を切り出して制作したものです。 この薄片を顕微鏡で観察すると、花崗岩質岩石の構成鉱物の種類や粒径とこれと接する相手側の岩石の構成鉱物の種類や粒径とがあまり違わず、これらが互いにモザイク状に噛み合ったようにして接しているので、境界がどこにあるのか判断できないくらいに不鮮明です。 互いの組織が漸移的に変化して接しているとしか思えないくらいです。
 はたして、この境界は貫入境界なのか、今までマグマの「上澄み液」からできた岩石と考えていたものは実は銅ヶ丸岩と同じ結晶質凝灰岩がもとになってできた岩石なのか。 それとも互いが漸移的に接しているもので、花崗岩と同源の岩石なのか。 これからも継続して観察活動をしていかなければならないです。




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