甘南備寺山登山は新緑の季節が最適!
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今年(令和3年)のGW期間中に行った観察会では、大田市や松江市から参加していただいた方達と甘南備寺山の山頂登山を行いました。 筆者としては、甘南備寺山の山頂まで登るのは大変久しぶりのことでした。 このたびは、水の国正面にある登山口から定番コースを上り、旧甘南備寺跡を経由して尾根沿いに一気に山頂まで登りました。 そして、下りは長距離コースで尾根沿いに一気に坂本川流域の道路まで降り、道路を歩いて車を置いている水の国正面の登山口へ帰りました。
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当館の行う観察会は、筆者が自然史関係の踏査で歩いたフィールドで主にやっているので、ちゃんと整備された登山道などほとんどない、言うなれば「野生の自然」みたいなところばっかりです。 やっぱり、山歩きに慣れた人向きかな?、といった感じもしますが、備えあれば○○であります。 山歩きに不慣れな参加者の方達でも責任を持ってご案内します。 当館の観察会では、決して個人や団体に参加を催促したりするようなまねはしません。 義理や人情、人脈や金脈、地縁や血縁、先入観や偏見などとは無関係に、純粋に「野生の自然」、「地域の自然史」、「自然史の科学」といったことに興味関心のある方達にどしどし参加していただくことを願っています。 このたびの観察会に参加していただいた方達には、この場をお借りして厚くお礼を申し上げます。
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かつて巨大な溶岩円頂丘の火山があった甘南備寺山山系を縦走しよう!
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流紋岩溶岩層に挟在している緩傾斜の凝灰岩層↓
流紋岩溶岩層と溶結凝灰岩層との境界付近に産する凝灰角礫岩(研磨標本)↓
流紋岩溶岩層と溶結凝灰岩層との境界付近に産する火砕サージ堆積層の凝灰岩↓
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(国土地理院発行 1:25000地形図「川本」をコピーしたものに加筆)
←甘南備寺山の山麓を流れる谷川の川床で発見!
先日、川床の露頭で丸みのある斑状顕著な安山岩質のブロック状が火砕岩中に含まれているのを発見した。 やっぱり、このあたりにも強溶結の火砕岩があるのかとようやくわかった。 発見の喜びを感じた。
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奥寺山山頂付近の流紋岩溶岩の露頭↓
↓尾根の岩場で一休み(平成14年5月)
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甘南備寺山の山麓を流れる谷川にある無名の滝↓
川越大橋のウオタカ↓ トンビではありません、あしからず
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貫入境界 発見! しかし、断層境界かも?→
先日、甘南備寺山の山麓を流れる谷川流域で凝灰岩の層に花崗閃緑岩が貫入して接している境界を発見した。 境界は軽微な割れ目になっていて、割れ目をはさんで岩相の違いが鮮明でよくわかる。 これまた発見の喜びを感じた。(シャープペンの左側にある縦の割れ目が境界。割れ目をはさんで右側が花崗閃緑岩、左側が凝灰岩)
←踏査中に見つけた鹿の頭部
先日、甘南備寺山登山口の一つである短距離コース登山口付近で鹿の頭部を見つけた。 これは猟師の罠にかかった鹿だそうで、切断した頭部だけを付近にほったらかしてしばらく獣に食わせて頭骨だけにするそうである。 大変、エグい光景だった。
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流紋岩の洞穴に安置された一体の地蔵さん↓
先日、甘南備寺の背後を流れている谷川を踏査していたら流紋岩の岩壁に掘られた洞穴の中に一体の地蔵さんがひっそりと置かれていた。 この付近の岩壁にはいたるところに洞穴が掘られていて、何体もの地蔵さんが折り重なるように倒れている洞穴もあります。
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必見!無名の滝とその周辺にある自破砕溶岩の大露頭
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甘南備寺山の山麓を流れ下っている谷川を下流側から上流側へ向かって歩きながら、谷川の川床やその周辺にある露頭(地表面にむき出しになっている地層の一部)を順々に観察して行ってみるといろいろと興味深い甘南備寺山の自然史を発見できます。 谷川には上流から流れてきた土砂や転石が積もっていて下流から上流までずっと露頭が続いているわけではないので、できるだけ多くの露頭を探し出してその岩相(人の人相みたいなもの)を観察して歩かなければなりません。
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(国土地理院発行 1:25000地形図「川本」をコピーしたものに加筆) 上の図面は、甘南備寺山の山麓を流れている谷川(坂本川の支流)を出口付近から山頂付近にある水源地付近までを歩きながら、谷川流域の露頭を観察してその岩相(岩種)を色分けしたものです。 自破砕溶岩は火山礫凝灰岩と流紋岩との境界付近にあり、遠い昔、火山礫凝灰岩の層を流紋岩溶岩が突き破って噴出してきたことを想像させます。
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無名の滝(落差約5m)
滝頂上の水際にある 流紋岩に含まれている自破砕岩片
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滝斜面にある自破砕のデコボコ
滝の東側山斜面にある 自破砕流紋岩
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← 滝周辺に転がっている自破砕流紋岩の転石 遠い昔、地表を突き破って出てきた流紋岩溶岩(流紋岩質のマグマ)が冷却されて岩石になる過程で、自破砕によってできた同質の大小さまざまな岩片・岩塊がまだ固まっていなかった溶岩に飲み込まれてできたもので、風化の進んだ面はゴツゴツデコボコしています。
踏査中に見つけた木炭→ 甘南備寺山の山麓には、いたるところに炭焼きの跡(釜跡)が残っていて、その周りには木炭の残骸が見られます。 また、たたら精錬によってできた鉱滓がたくさん集積した跡もあります。 はたして、どこで砂鉄を調達したのだろうか?
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流紋岩の分布と火山の存在、自破砕が起きるわけ
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流紋岩という岩石は非常に粘りの強い溶岩(マグマ)が火山から噴出し冷却固結してできた岩石です。 粘りが強いため火口から噴出した溶岩は火山周辺へほとんど移動せず、火口付近で固結したまま新たに噴出してきた溶岩によって上方へ押し上げられ、火口のほぼ真上に溶岩円頂丘を形成します。 現世の火山で言うなら、北海道の昭和新山や有珠山のような感じだと思いますが。
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火山から噴出した溶岩(マグマ)は、外気に触れている溶岩の表面や地表に接しているところは溶岩内部よりも早く固まりますが、溶岩内部はまだ固まっていないのでその流動につられてすでに固まっているものが自破砕して細かな岩片として内部に取り込まれていきます。 このようにしてたくさんの自破砕岩片を含み込み、最終的に冷えて固まってできた岩石が自破砕溶岩です。
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上の説明図は、安山岩質溶岩や玄武岩質溶岩のような粘性の低いサラサラした溶岩(マグマ)のものであまりまげにないですが、自破砕のでき方は基本的に同じです。
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安山岩質自破砕溶岩や玄武岩質自破砕溶岩では、含まれている自破砕岩片は強く酸化して赤褐色っぽい色を呈しているのが多いですが、流紋岩質自破砕溶岩は含んでいる鉄分が少ないせいか自破砕岩片はぜんぜん赤っぽくないです。 溶岩(マグマ)内部で早期に固まってできた岩片かもしれません。
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