日本最古の岩石を訪ねて(岩種は花崗片麻岩)
(岐阜県七宗町上麻生から島根県津和野町まで、、、時を旅する)
 令和1年3月、それまで日本最古の岩石の産地として知られていた岐阜県上麻生のものよりももっと古い岩石の産地が島根県内にあるという報道がありましたが、まさか30年以上も前に自分がよく車でウロウロしたことのあった地域の近くであったことを知り大変驚いたことがありました。
 県西部には30年以上も前に住んでいたことがあったので、付近の事情はけっこうわかっていて懐かしさと郷愁を感じながら訪ねてみることができたが、産地のある付近は山が低く谷が浅い関係で露頭状況がすこぶる悪く、山斜面や尾根、谷川などにある転石には花崗片麻岩と思われるものが多くあったけれど、花崗片麻岩の露頭にはなかなかお目にかかることができなかった。

野外発見学習の絶好のフィールド!
花崗片麻岩を含む砕屑岩の露頭を追って
(島根県鹿足郡津和野町部栄〜寺田)
 上の写真では、谷川の底に花崗片麻岩の砕屑物(鉱物片や岩片、岩塊)を含む砕屑岩の露頭が出ていて、これを挟んで上流側と下流側に緑泥石や緑簾石を多量に含んだ青黒っぽい岩石(初生的には細粒の閃緑岩あるいは石英閃緑岩と考えている岩石)があります。  上の写真では、ハンマーを置いている付近をほぼ真横に溝状にえぐれた割れが通っていて、これを境に上に緑泥石や緑簾石を多量に含んだ青黒っぽい岩石(初生的には細粒の閃緑岩あるいは石英閃緑岩と考えている岩石)、下に花崗片麻岩あるいは花崗岩に似た岩石があって互いに接しています。
 当館は「野外発見学習」を活動目標にしてやっているので、大学の先生方が書かれた論文・文献関係の内容は全く知りません。 自分が知っているのは、津和野町の部栄地区から寺田地区の一帯に日本最古の岩石(花崗片麻岩)がある、ということくらいです。
 発見学習は、科学的な知識が導出されてきた過程を少しでも追体験しながら探求的に発見的に科学を学んでいこうというものです。 そのため既存の科学的知識は先行知識や先入観として働くことが多いので、この津和野での観察活動でも全く予備知識を入手することはしませんでした。
 しかし、当館のようなところで機器を使った岩石の詳細な分析や年代測定などができるはずはないので、あくまで当館ができる発見学習の範囲はフィールドでの観察と当館の安価な偏光顕微鏡を使った岩石組織の観察くらいです。 あくまでも当館のできる範囲内で、少しでも発見的に「科学的知識が導出されてきた過程」を追体験しようというものです。
 上の二枚の写真に写っている谷川流域の北側と南側には、頁岩や粘板岩、黒色片岩といった泥質の岩相が広くみられ、この泥質の岩相にサンドイッチのように挟まれたところに谷川が流れています。 この谷川流域には青黒っぽくて緑泥石などの緑色鉱物を多量に含んだ初生的には細粒の閃緑岩か石英閃緑岩ではなかったかと考えているものが目立ってみられ、これに含まれるようにして花崗片麻岩の岩塊や岩片、鉱物片などからなる灰色っぽい砕屑岩が点在しているようです。
 ← 青黒っぽい岩相の中に含まれている砕屑岩の岩塊
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 砕屑岩の岩相は一様なものではなく、近距離でも目まぐるしく変化していて、下右側の写真のサンプルのように、含まれている岩片の岩種が花崗片麻岩なのか花崗岩なのか肉眼では区別が難しいものが多くあります。

花崗岩に似た丸みのある岩片を含む砕屑岩→ 
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 また、この付近の山斜面には流理や自破砕を伴った流紋岩と思われる白っぽい無斑晶質的なものや微細な石英だけから成ると思われる珪質の無斑晶質的な岩相などもけっこう広い範囲にみられるようです。 特に微細な石英だけから成ると思われる珪質の無斑晶質的な岩石などは、熱水鉱脈鉱床によくみられる石英脈の岩石によく似ていて大変興味深いです。 これからもコツコツ調べていこうと思います。

★只今、作成中!


 ← 「日本最古の岩石」が展示してある博物館施設(津和野町森村)

 津和野町の観光地区にある博物館施設には、H大の先生方が研究された「日本最古の岩石」に関する研究内容の概要と岩石の標本が展示してあります。
 このたびの自分の津和野町での観察活動を始めるに際して、日本最古の岩石である花崗片麻岩の産状をフィールドでしっかりと確認することができたら、この博物館施設へ行ってこの展示を見学しようと心に決めていた。 そして、津和野町での観察活動を始めてから三ヶ月、ようやくこの施設へ見学に行くことができた。 正直、自分の観察内容と食い違う点がちょっとあったけれど、「知識は結果ではなく過程」だと思うので、これからもコツコツ津和野町へ出かけて観察活動をやっていきたいものです。

廃墟と化した天体観測所
(島根県鹿足郡津和野町野中)
↓ 放置されたままの天体望遠鏡   
 日本最古の岩石を訪ねて県西部へ行ったおり、まこと何十年かぶりに、あの天体観測所へも寄ってみた。
 最古の岩石の産地付近から県道を車で15分たらずのところにあり、自分が県西部に住んでいたころ、父の天文仲間で当時津和野町内に住んでおられた人の依頼で父が手作りした天体観測所です。
 8月の暑い時期で、自分は8月じゅうはけっこう暇だったので、よくここへやってきて父の作業の手伝いをした。 桜江の家からやってきていた父は、隣接してすでに建てられていたプレハブに何日も泊まり込んで作業をしていた。
 しかし、依頼された人は観測所ができて間もなく北海道へ移住されてしまい、それ以後は全く使われない状況に陥ったらしいです。 観測所内には今も口径30センチもある反射望遠鏡が錆びた状態で放置されていた。 これとは対象的に、天文ドームを覆っている金属板はステンレスで錆びることもなく、ほとんど当時のままの輝きを放っていた。 何とも虚しく寂しい思いを感じた。


県西部の県境付近へ行くなら・・・須佐高山と苔石海岸へ行こう!
(山口県須佐町 苔石海岸から須佐高山を望む↓)
 もう何十年も前、自分は島根県西部の端付近に住んでいて、日曜日にはよく県境を超えて山口県の須佐町にある通称「磁石山」と呼ばれている須佐高山や近くの海苔石海岸へ出かけました。 そして、高山の麓から重さ1kgの鉄アレイを両手に持って山頂まで走って登る鍛錬をよくしたものでしたが、当時から自分はかなりの変人でした。 それが済んでから「ホルンフェルスの大断崖」として観光地になっている海苔石海岸へ出て自然史関係の観察をしてウロウロしました。 

 この付近の海岸には高山の山体をつくっている斑レイ岩(この付近のものは石英閃緑岩かもしれません)と砂岩頁岩互層との接触境界があって、熱変成によってできた様々な岩相が見られて大変興味深いところです。 また、砂岩層中にはサンドパイプなどの生痕化石も多く見られます。

← 高山斑レイ岩類と須佐層群との貫入境界が出ている大露頭 (山口県須佐町 須佐高山の山麓海岸)

 新緑の季節が来ると無性に行ってみたくなるフィールドの一つが須佐高山周辺です。 かなり遠いですが、朝9時頃に家を出れば正午ごろには須佐に着きます。


貫入境界 → 

 右の写真は、須佐層群の頁岩に対して高山斑レイ岩類(この付近は石英閃緑岩)が貫入して接している境界です。
 上下方向に境界が通っていて、境界の左側が高山斑レイ岩類の石英閃緑岩、右側が須佐層群の頁岩です。 頁岩は強く熱変成を受けていて、まるで黒色の砂岩のようなギラギラザラザラした岩相のホルンフェルスになっています。

← 須佐層群から高山斑レイ岩類の中へ入り込んでいる岩脈(砕屑岩脈 )

 左の写真には、右側の須佐層群から左側の高山斑レイ岩類の中へ岩脈(砕屑岩脈 )が伸びているのが見られます。


砕屑岩脈 → 

 右の写真も須佐層群から高山斑レイ岩類の中へ入り込んでいる岩脈(砕屑岩脈 )で、岩脈は須佐層群の頁岩が強く熱変成を受けてできたホルンフェルスです。 これだけを見ると、一般の火成岩の岩脈のように須佐層群の方が高山斑レイ岩類へ貫入してきたように見えるのですが、実際はその逆です。
 なぜ、須佐層群の側から高山斑レイ岩類の中へ砕屑岩脈が入り込んでいるのか、を考えてみるといろいろ興味深いことがわかってくるのではないかと思います。
 とにかく露頭状況抜群で、野外発見学習の絶好のフィールドだと思います。 ぜひ、行ってみてください。 


県西部の県境付近へ行くなら・・・県内唯一のアンモナイトの産地へ行こう!
(島根県鹿足郡吉賀町)
 島根県の西の端付近で自然史関係で特徴的なフィールドといえば、やっぱり県内唯一のアンモナイトの産地として知られている旧鹿足郡六日市町の樋口谷じゃないかと思います。 樋口谷の谷川最奥の水源地付近にアンモナイトを多産する地層がありました。
 当時、桜江の実家からやって来た父と出かけたときに採集したアンモナイトは当館でずっと展示しているもので、本HPの化石展示資料のページにも載せています(ただし、学名が間違っているかもしれません)
 また、樋口谷に隣接して鹿足河内川という谷川があって、この谷川流域もけっこう詳しく調べて歩きました。 実は、この鹿足河内川流域には、令和2年秋に文化勲章を受賞された彫刻家のS先生の実家があったところらしいです。 自分がこの付近を踏査して歩いた頃、たしか壊れかけた茅葺きの家があったように記憶しているのですが、はたしてそれがS先生の実家であったかどうかは定かでないです。 はたして今も実家が残っているのでしょうか。
 また、吉賀町は世界的なファッションデザイナーとして知られたM先生(故人)の出身地でもあります。
 何十年もの年月を経て久しぶりに行ってみたいフィールドです。



日本最古級の岩石や恐竜化石の産地・・・奥飛騨へ行こう!
上麻生礫岩の産地
(岐阜県七宗町上麻生)
奥飛騨白川郷の合掌造り→ 

 ←片麻岩礫を含む礫岩層のある飛騨川沿岸

砂岩頁岩互層にはさまれた礫岩層(ほぼ直立している)↓

上麻生礫岩↓

★只今、作成中!


 ←上麻生礫岩の記念碑と前館長(平成19年没)

案内の標柱↓

★只今、作成中!

花崗片麻岩と薄片(左上)
(左下は大きさ比較のために置いた10円玉)
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花崗片麻岩の鉱物片・岩片を含む砕屑岩と薄片(右側)

(右下は大きさ比較のために置いた10円玉)
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緑泥石を多量に含む変質が進んだ岩石と薄片(右側)

(右下は大きさ比較のために置いた10円玉)
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